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赤外線ハイスピードカメラについて

このページでは、ハイスピードカメラの中でも特に「赤外線」を活用して対象を認識・撮影する赤外線ハイスピードカメラについて解説しています。赤外線ハイスピードカメラの特徴や機能、活用事例などをまとめていますので、比較検討時にご活用ください。

赤外線ハイスピードカメラとは

赤外線ハイスピードカメラ(高速赤外線カメラ)は、撮影対象から放射されている「赤外線」を可視化した上で、さらに高速撮影を可能にする産業用機械です。

そもそも赤外線はさまざまな物質から放射されており、人間の目には見えないものの熱量や温度の検知などにおいて重要な役割を担います。また、1秒間に数百~数千コマの撮影を可能にするハイスピードカメラを赤外線センサーと連携させることで、対象の温度変化を精密に撮影・分析することが可能となります。

赤外線ハイスピードカメラの事例

CFRP破断時に発生する熱の確認と状況観察

FRPとは「Fiber Reinforced Plastics(繊維強化プラスチック)」の略称であり、CFRPとはFRPへ炭素繊維(Carbon Fiber:カーボンファイバー)を加えた「炭素繊維強化プラスチック(Carbon Fiber Reinforced Plastic)」の略称です。

CFRPは様々な製品や部品、業界において使用されている素材ですが、CFRPの耐久試験や品質検査において、詳細な分析に赤外線ハイスピードカメラが活用されることがあります。

例えば繊維の両端を引っ張って、どの程度の強度で検査対象が破断するのかチェックする「引張り試験」がありますが、通常の目視であれば破断する際の応力(限界値)を確認することができても、どの程度の応力から破断リスクが上昇するのか内部変化について細かく視認することはできません。

引張り試験において赤外線ハイスピードカメラを活用し、対象の温度変化を撮影すると、応力が増していくごとに物体の温度が上昇し、さらにその変化が繊維方向へと分布していく様子が観察されます。これにより、初期状態から破断時までの温度上昇値を測定したり、物体としての脆弱性や破断ポイントなどを分析したりすることが可能です。

なお、引張り試験でCFRPが破断する現象は一瞬に起きるものであり、正確な撮影には高感度の赤外線センサーだけでなく、秒間の高速撮影が可能なハイスピードカメラを用意しなければなりません。

CO2ガスなど目に見えない気体成分の可視化

二酸化炭素(CO2)のように多くの気体は目に見えませんが、ガスの管理は様々な場所や分野で重要なものであり、ガスの流れや発生状況を可視化できれば多くの作業でメリットを得られます。

赤外線ハイスピードカメラでCO2ガスを可視化する場合、例えば波長4.3ミクロン帯において水蒸気よりもCO2の方が、赤外線吸収量が多いという特性を活かして、正しくガスの種類や流出量を検証します。

赤外線ハイスピードカメラを活用することで小規模のガス漏れを検出したり、大規模なガス漏れを遠方から検知したりといったことが可能です。

また、赤外線ハイスピードカメラと安価なCO2ガスを組み合わせて気流の状態をチェックすることで、空気の流れや室内環境などを分析するためのトレーサーとして利用できる点も特徴です。

赤外線ハイスピードカメラでCO2ガスを検出する仕組みは、貨物船やタンカー、トラックなど様々な輸送車両の安全管理や、運送物の品質管理などにも利用されています。

溶接現象の可視化と状況計測

溶接作業にはスポット溶接やアーク溶接、また人の手作業による溶接やレーザー溶接加工機のような機械による溶接など、様々な種類が存在します。加えて、溶接の品質管理には溶接を行う対象物や溶接方法とのマッチング、特にレーザー溶接の場合は温度設定やレーザーの移動速度といったパラメータの調整が重要ポイントです。

しかし、溶接による温度変化や状態変化は瞬間的に行われるものであり、精密な分析や撮影には高精度の温度変化検出に加えて、高速撮影を可能とするデジタルカメラが必要となります。

赤外線ハイスピードカメラによって溶接中の状況を撮影すれば、溶接部の温度変化を把握して溶接条件の再調整や再検証に役立てられる上、周辺に飛び散る金属粉などの飛散状況などを確認することも可能です。

溶接作業中に発生する金属粉は溶接の仕上がりに影響するだけでなく、周辺の安全リスクにも直結するポイントであり、例えば高熱の金属粉がまき散らされていれば溶接条件を見直して安全対策をリプランニングするといったことにも役立ちます。

切削加工における温度計測1(切削点の非接触 温度解析)

ものづくり業界において、金属加工機械やレーザー加工機などを活用した切削加工は必要不可欠な技術です。そのため、高精度・高効率な切削加工技術の追求は、そのまま生産できる部品や製品の品質にも直結していく課題です。

切削加工によって加工される素材には、鉄やステンレス、アルミといった金属から、過酷な環境や特殊な環境に適合した超合金や特殊耐熱合金まで様々なものがあり、各素材や作業内容に合わせた切削加工条件や工具の選定を行わなければなりません。

特に、原子力産業や航空宇宙分野といった過酷な状況で利用される製品の場合、耐熱性や耐久性に優れた素材の精密切削加工が欠かせませんが、耐久性や硬度に優れている分、切削加工の難易度も高まります。また、強力なパワーで切削加工を行うことで、局所的に高温の切削熱が発生し、場合によっては素材の限界値を超えてしまうこともあるでしょう。

赤外線ハイスピードカメラを活用して温度解析・温度管理を行うことで、製品素材の品質を劣化させずに適切な切削加工条件を検討することができます。

切削加工における温度計測2(切削加工中の工具・切粉温度計測事例)

特殊耐熱合金のような高難度の素材を切削加工する場合、使用する工具や加工機についても性能や条件をしっかりとマッチングさせなければなりません。しかし、高難度の素材を切削しようとすれば、切削工具にも当然ながら高熱が発生し、工具や加工機の劣化要因になります。

また、切削加工では周辺に金属粉が飛散することも重要です。

高熱になった金属粉が周囲に飛散することで、対象物の表面に不良が発生したり、周りにいる作業員や施設・設備に危険が生じたりといったリスクが増大します。

そのため、赤外線ハイスピードカメラを活用して工具の状況を分析したり、金属粉の飛散範囲や流れる方向などを解析したりすることで、業務全体の効率化や安全化を追究していくことが可能です。

接着剤の塗りムラなどを赤外線ハイスピードカメラで分析

溶剤や化学物質による反応で硬化する接着剤の場合、塗った直後から硬化していくまでに温度上昇などの温度変化が発生します。

接着剤の硬化状況は簡単に目視できるものではありませんが、赤外線ハイスピードカメラを活用することで熱量の変化を可視化し、間接的に接着剤の塗り状況や硬化速度といったものを分析することが可能です。

接着剤を塗る作業をシステム化したい場合や、作業品質の管理を効率化したい場合などにおいて、赤外線ハイスピードカメラを活用した接着剤の観察は情報収集に有効といえるでしょう。

さまざまなハイスピード
カメラを
扱っている会社一覧

THREE SELECTION
       
活用事例から見る!
シーン別ハイスピードカメラ3選
ハイスピードカメラを選ぶ上では、必要とするスペックや機能を把握することも大切ですが、導入後のイメージを明確にするために活用事例を参考にすることがおすすめです。ここでは、ハイスピードカメラの活用事例の多い3社とおすすめ製品を紹介します。(2021年10月1日時点)

製造現場で活用するなら

ASPINA シナノケンシ
シナノケンシ公式HPキャプチャ
引用元:シナノケンシ公式HP
https://plextor.jp/plexlogger/

活用事例数

製造現場:40件
研究開発:8件
特殊状況:0件

おすすめの理由

製造現場で求められる
スペックを満たし(100,000fps)
撮影・記録・解析機能が1台で叶う

研究開発での用途が多いなら

フォトロン
フォトロン公式HPキャプチャ
引用元:フォトロン公式HP
https://www.photron.co.jp/

活用事例数

製造現場:8件
研究開発:29件
特殊状況:0件

おすすめの理由

研究用に適した
撮影速度100万fps以上の
製品が多い (3製品)

特殊な状況での撮影が必要なら

ノビテック
ノビテック公式HPキャプチャ
引用元:ノビテック公式HP
https://www.nobby-tech.co.jp/

活用事例数

製造現場:12件
研究開発:28件
特殊状況:7件

おすすめの理由

防衛や宇宙関連など、
高度な技術を要する撮影にも
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※Googleで「ハイスピードカメラ」と検索して出てきた上位の28社の中から、公式HPに掲載されていた活用事例数が多い3社をピックアップしています。(2021年10月1日時点)
※活用事例の「特殊状況」とは、爆発や衝撃波などの事例を表しています。